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吉屋信子『花物語』よき人を想う儚き少女たち

花物語 感想

 

後世に多大な影響を与えた少女小説。

 

『花物語』
著/吉屋信子(よしやのぶこ)
イラスト/中原淳一
出版/国書刊行会、他

 

あらすじ

少女の日の美しい友との想い出、両親を亡くした姉弟を襲った悲劇…
花のように可憐な少女たちを繊細に綴った数々の感傷的な物語。

世代を超えて乙女に支持され、「女学生のバイブル」と呼ばれた不朽の名作。

 

百合濃度

 

この作品はこんな人にオススメ

・少女小説が好き
・切ないお話が好き
・レトロなものが好き

 

 

願わくば、少女の想いよ永遠に。

 

 

『花物語』はこんな人にオススメ

少女小説が好き

『花物語』は花の名前になぞらえた
少女たちのお話がつめこまれた短編集です。

どの短編も少女のひたむきな姿が描かれています。

少女が少女を慕う姿は、
百合作品の誕生に多大な影響を与えたとされています。

 

切ないお話が好き

裕福だったおうちが没落してしまったり、
慕っているひとや家族と離れてしまったりと
少女が不遇な立場に置かれる話が多いです。

涙を誘う描写もあり、
最初から最後までハッピー!な話は見当たりません…。

 

レトロなものが好き

大正時代の女学校に寄宿舎という舞台や、
少女たちの上品な言葉遣いは、
現代小説にはない雰囲気を醸し出しています。

文体も時代を感じさせるため、
少し読みづらくも感じますが、
花や少女のさびしい心のうちを鮮やかに表現しています。

 

 

『花物語』感想&好きなポイント

偶然読んだ小説に、”花物語のようなエスという関係性にあこがれる女の子”が出てきたため、気になって手に取りました。

なるほど、切に相手を思い慕う姿にはいっそ神聖なものすら感じられました。

ただ、その当時の時代背景もあってか、報われないお話が多く、
読んでいてつらかったです…。
女の子みんなしあわせになってほしい…。

精一杯生きようとする少女と、タイトルにされた花の調和が美しい作品集でした。
私の心の片隅にずっと咲き続けるだろうな、というくらいには読んでよかった作品です。

 

『花物語』補足情報

「エス」について

「エス」とはSisterの略語で、少女同士の情熱的な関係のことです。

『花物語』にはエスを感じられる関係性をえがいたお話が多くありますが、
エスという言葉の記述があるのは下巻のひとつのお話のみでした。

「エス」とは何か?ということには触れられず、
作品のなかでは当然みんなが知っている言葉として扱われています。

 

『花物語』は複数のバージョンがある

この作品が一冊の本としてはじめて世に出たのは大正9年(1920年)。

たくさんの人に長く愛されている作品のため、
装丁のちがうバージョンがいくつか存在します。

 

一番手に入りやすいのは「河出書房新社」版

2009年に発売されました。
Amazon等のネットショップや本屋さんで
新品でゲットできる『花物語』は、この「河出書房新社」版のみです。

 

レトロなイラストが可愛い「国書刊行会」版

花物語 感想
この記事の写真のものです。
昭和60年(1985年)に発売されました。

中原淳一のイラストが可愛らしく、
当時の女学生に大人気だったそうです。
表紙だけでなく、本文中にも挿絵が入っています。

オークションサイトやフリマアプリでたまに見かけますが、
出品されるとすぐ売り切れてしまいます…。

私は図書館で借りてきました。
司書さんが奥の書庫から出してきてくれたので、
貴重な本なんだろうな…。